リークレート仕様の設定

水漏れは必ずしも水の漏れを意味しない - 正しいリークレートテスト仕様の導き方

Set up analysis

自動車業界では、毎年何十億もの部品、サブアセンブリー、組み立てられた車両のリークテストが行われています。各リークテストにおいて、どの程度のリークレートであれば "問題なし "とみなされ、どの程度のリークレートは大きすぎる、あるいは "問題あり "と定義されるのかというようなリークテストの仕様を決める必要があります。

なぜリークテストを行うのか?

正しいリークレート設定の決め方を理解するには、まず、なぜ部品やサブアセンブリのリークテストが必要なのかを理解する必要があります。「何を防ぐ必要があるのか?」というのが良い質問です。漏れが部品やシステム、あるいは製品ユーザーに損害を与えてしまうこともあります。また、環境問題につながる漏れに関しては規制が適用されていてそれを満たさないといけないこともあります。問題は1つではなく複数の場合もありますが、防ぐ必要のある問題が定義されたら、次のステップは漏れを分類することです。

漏れの種類

すべての漏れは、以下の3つの一般的なカテゴリーに分類することができます。

  1. 媒体が部品やシステムに含まれていること(その媒体が失われると損害が発生する可能性がある)
  2. 異なる媒体が部品やシステムに侵入すること
  3. ある媒体が、別の媒体が循環しているところに混ざりこんでしまうこと
Leakage categories_JP
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漏れカテゴリー

正しいリークレートテスト仕様の導き方

一部においては、保証すべき最大リークレートについて明確な規制があります。最も顕著なケースは、エアコンの冷媒の最大許容リークレートの規制です。

どの媒体にどのリークレートが適用されるかを示す簡略表が参照されることがあります。このような表は誤解を招く恐れがあります。なぜなら各媒体に対しての仕様が1つしかないというわけではないからです。水密と言っても、例えば、発電所での水漏れと電子部品への水の浸入では意味合いが異なります。

各コンポーネントでその想定されるアプリケーションにおける最大許容リークレートを設定する必要があり、そこからリークレート仕様は導き出すことができます。例えば液体漏れについては、少量の液体であれば許容できるというところから全く漏れがないという範囲まであります。ガス漏れについては、漏れがないというのは技術的に不可能です。

例:水-グリコール系冷却液の損失

水-グリコールは何世紀にもわたってエンジンの冷却に使われてきました。エンジンが冷却媒体を失うと、エンジンがオーバーヒートを始め、最終的には壊れてしまうリスクがありますが、少量の冷却液の損失であれば冷却リザーバから単純に補充されていきます。また、少量であれば温かく換気の良いエンジンルーム内ですぐに蒸発してしまいます。通常、この用途では10-3 mbar·l/sのリークレート仕様が使われています。

Autokuehler_Inficon
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最新の駆動系バッテリーも、水-グリコールの混合液による冷却路が用いられることが多いです。しかしながら、要求仕様ははるかに高いです。少量の水-グリコール損失でも電子部品に接触すると電気ショートを引き起こす可能性があります。そのため、水-グリコールの許容リークレートは、エンジン冷却用途に比べてはるかに低いレベルに設定する必要があります。これらの冷却路は圧力にも依存しますが、10-4から10-5 mbar·l/sの範囲のリークレートでのリークテストが必要です。

Battery_Cooling_Circuit_cropped
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リークレート仕様に影響を与えるその他の要因には、以下のようなものがあります。

  • 温度
  • 作動圧力
  • 物質の組み合わせ
  • 規制

特に作動圧力は、漏れ量に大きな影響を与えます。流体の作動圧力が高ければ高いほど、いかなる欠陥によるリークレートも高くなります。そして、その上昇は直線的ではなく、漏れ量は圧力の二乗に比例します(q~p²)。

また、液体の水の浸入だけを防ぐのか、あるいは水分の吸収も問題になるのかによって、水の浸入に対しても非常に異なる仕様が要求される場合があります。通常、大気圧付近での液体の水の浸入に対しては10-3~10-5mbar·l/sの範囲のリークレートが要求され、水分の浸入を防ぐためには10-6mbar·l/s以下のレンジでのリークレートが要求されます。

例:燃料漏れ

内燃機関車(ICE/Internal Combustion Engine)では、ガスタンク、燃料供給ライン、噴射システムなど、いくつかの部品で燃料漏れを防止しなければなりません。ガスタンクや燃料供給ライン・ポンプでは燃料は液体の状態で、燃料噴射システムや高圧燃料ポンプではガスは気体の状態で封入されています。また、圧力はガスタンクだと大気圧から燃料噴射システムでは最大2,000barまで大きく変化します。

DE_LKW-Kraftstofftank-(Fotosearch)
DE_LKW-Kraftstofftank-(Fotosearch)

ガスタンクの液体漏れを防ぐには、10-3 mbar·l/sのリークレート仕様で十分かもしれませんが、蒸気としてガスタンクから排出される炭素水素に対する厳しい規制では、より厳格なテストが要求されることがよくあります。燃料システムの低圧側では通常10-4 mbar·l/sレンジでリークテストが行われますが、燃料噴射システムの高圧側では、10-5 ...10-6 mbar·l/sでのリークテストが必要です。

Comanrail_300dpi
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各アプリケーションでの仕様

部品やシステムがテストされるべき正しいリークレート仕様には、多くの要因が影響を及ぼしています。

Leak rate examples_JP
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さまざまな作動流体に対するリークレート仕様

一部事例においてはガイドラインを提示することができます。しかしながら、正確な条件は実際のケースごとに異なる可能性があるため、正確な想定アプリケーションに基づいて各事例で決定していく必要があります。

特定のコンポーネントやサブシステムのリークテストの仕様の定義において、私たちでお役に立てることがあればお問い合わせください。- お問い合わせ.

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